
桜の花が開花すると2007年のデザイン界も始動する。これから開かれる三つのイベントのことで頭がいっぱいだ。
まずは言葉と文字の回路を模索し続ける東京タイプディレクターズクラブ、通称東京TDC展の開催だ。
世界水泳の開催地メルボルンに住んでいる審査員のひとり、ジョン・ワーウィッカーさんがポスターのデザインと4月3日から25日まで開かれるギンザ・グラフィック・ギャラリーの第250回企画展の序文を引き受けてくれた。『東京TDCの素晴らしさは、世界の著名なデザイナーも学生も同等に審査されるということでしょう。重要なのは、地位や名声に左右されるのではなく、純粋に作品を評価することなのです。TDCの審査に立会う喜びは応募者からの挑戦を受け、そこから学ぶ機会を得ることです。そこには「絶対」はありません。ただ「プロセス」があるのみなのです。TDCにおいて私達が求めるのは人間性の表現であり精神です。たとえ石に彫られた作品であれ、精巧に作られた25枚の連作ポスターであれ、それは同じことです。商業主義と消費主義の呪縛から解き放たれたTDCの価値は他のデザインコンペとは比較になりません。この開かれた精神と考えに共鳴し私や他の海外の多くの作家は作品を出品するのです。TDCは「方法論」とは無縁の存在です。私達の心を、眼を、思考を揺さぶる作品、共鳴する作品に反応するのです。』
知的で哲学者の風貌をしたジョンがゆっくりと何度も何度も通訳に質問しながら審査していく姿が目に浮ぶ、ジョンありがとう。
4月6日(金)午後5時半〜7時のTDC賞授賞式と展覧会オープニングパーティ。4月8日(日)午後12時半〜7時のTDCDAY。(詳細は www.tdctokyo.org)
僕は招待状の文章を書いた。
『スピードの時代だからか。あっという間に2007年4月。東京TDCの季節がやって来た。先日、NHKの深夜番組で、人口6千人の沖縄の北28キロにある与論島が取材されていた。与論島方言を一カ月に一度、先生が生徒に教えている。小学校の掲示板に「創造する心」と書かれていた書道が並んで貼ってある。視線がそこで止まった。珊瑚礁の美しい海。精神と自然のつなぐ回路のことを一瞬考えていた。「クリエイティブする心」。東京TDCの進路が頭の中で点滅する。
友人の青山学院大学教授、井口典夫さんから、アメリカでベスト・セラーとなったリチャード・フロリダの著者『クリエイティブ・クラスの世紀―新時代の国、都市、人材の条件―』(ダイヤモンド社)を4月に出版するので、その推薦文を書いてほしいという依頼があり「クリエイティブが国境を越えて都市と都市、人と人を新たに結びつける。未来は、そこにある」とすぐに書いた。20周年を迎えた東京TDCの姿をぼくはそこに見い出した。2006年の香港展。今年4月5日から一カ月開催されるメルボルン展。10月のソウル展、続いてシドニー展。まさに都市と都市を結ぶ運動体へと進化しようとしている。今年もたくさんのクリエイティブクラスの人達が、クリエイティブ都市TOKYOに集結する展覧会と授賞式に、ぜひご参会ください。』
東京TDCの次は4月10日(火)→14日(土)までメルボルン入り、帰国後すぐに世界最大のデザインイベント「ミラノ・サローネ」に出席をする。今年は日本のグラフィック展も参加する。こんな内容の呼びかけの文章を関係者に発送した。
『東京グラフィック展 開催のお願い。
ミラノ・サローネには、世界中から、30万人のデザイン関係者およびデザイン主要メディアが集結します。その中でも最も注目を集める SUPER STUDIO の会場では、優れた生活デザインを提案する日本の企業や、国内外で活躍する建築家&デザイナーの東京プロジェクトによるプレゼンテーションなどが行われ、このイベントを通じて今の日本のコンテンポラリーなライフスタイルデザインを世界にアピールし、世界のデザインハブ都市「TOKYO」を目指します。
東京グラフィック展は、 SUPER STUDIO の中の主要コンテンツです。日本を代表する12名のアートディレクター、グラフィックデザイナーに「TOKYO LOVE」を表現していただきたい。作品を通じて、東京のエネルギーを世界に伝えていただきたいと願っています。
ポスターでもエディトリアルでもロゴマークでもいいです。軽くて重要なメッセージを世界に伝播していただきたいと思います。急ぎの仕事になりますがふるってご参加されることを希望します。
NPOデザインアソシエーション会長
東京グラフィック展実行委員長 浅葉克己』 |

浅葉克己
横浜出身。桑沢デザイン研究所、佐藤敬之輔タイポグラフィ研究所にて 文字設計を修業後、ライトパブリシティに入社。1975年、浅葉克 己デザイン室を設立。中国の少数民族ナシ族に伝わる象形文字・トンパ 文字への造詣が深く、トンパ文字掛軸で02年東京ADCグラ ンプリ。同年、紫綬褒章を受章。青山芸術祭第3回DESIGN AWARD審査委員長。