
【○月□日】
仕事で「しまなみ海道」の旅をした。
「しまなみ海道」は、広島県から瀬戸内の島を橋で結んで愛媛県まで行くルートだ。わかりやすく書くと、JR山陽本線の尾道から、向島、因島、生口島、大三島、伯方島、大島それで愛媛県の今治市に入る。本州から向島へ渡るのが尾道大橋。向島から因島へ渡るのが因島大橋。因島から生口島へ渡るのが生口橋。生口島から大三島へ渡るのが、多々羅大橋。大三島から伯方島へ渡るのが大三島橋。伯方島から大島へ渡るのが伯方大島大橋。大島から愛媛県へ渡るのが来豊海峡大橋となっている。ぼくは東京から新幹線の福山駅へ入り、そこからレンタカーで移動した。
面白いことに(面白くないかもしれませんが)、青山はすっかり桜が散っていたのに、瀬戸内は桜が満開だった。東京の方が北というイメージがあるのだが、桜というのはちょっとわからないところがあるものだ。
瀬戸内は柑橘類の産地で、どこにでもデコポンだのザボンが売っていた。もちろんたくさん食べたし、買って東京まで送ったりしたが、よく考えてみたら、青山のピーコックにも東急ストアにも豊富に売ってるんだよね。
「しまなみ海道」の島々は、かつて村上水軍など、まあ海賊といってしまうと叱られそうだが、まあそういった水軍が大暴れしたところで、いろいろと歴史の踏が残っていた。ぼくが泊まった因島のホテルは、かつて村上水軍の長崎城という城のあったところだったらしい。チェックアウトの時、ホテルの支配人に一筆サインを求められたのだが、よほど「パイレーツ・オブ・因島」と書こうとしたがやめておいた。
【○月□日】
「しまなみ海道」から帰京した数日後、今後は兵庫県の丹波篠山へ陶器の旅にでた。今は篠山市に合併されたかつての今田町は、日本の六古窯の一つ丹波立杭焼の町である。ぼくはこのあたりの旅は二度目で、泊まりは篠山市の中央にある温泉宿に泊った。以前来た時、篠山市には温泉はなかったのだが、どうやら温泉が出たのだろう。まあ日本のように火山脈があちこちに張り巡らせている国は100メートルくらい掘れば何処でもお湯が噴出するのだろう。きっと表参道だって出るにちがいない。まあ冗談はさておき、驚いたことは、篠山市のメインストリートが青山通りということだった。と、いうのは城下町である篠山藩の九代藩主は青山因幡守忠朝といい、この人は美濃郡上八幡藩青山家(四万八千石)の祖となった青山幸成の兄の青山忠俊の家から出ているのだという。ちょっと話がややこしいが、今の青山は青山幸成の屋敷だったわけで、彼は兄(忠俊の子)の子宗俊が幕府に召し出されると、自分の青山の屋敷の北半分(246の北側)を分与しているのだ。
ぼくが言いたいのは、ぼくが毎日仕事をしている青山という所はまんざら丹波篠山と無関係ではないということなのだ。篠山市の青山通りはそんな繋がりが由来していると見ていいのだろう。因みに、丹波篠山の名物は、黒豆にボタン鍋ということになっている。
そうそう、東京はすでに葉桜であったのに、丹波篠山の桜は満開だった。古城(篠山城)に散る桜もなかなかのものであった。
【○月□日】
今年も和田誠さんと南青山のスペースYUIで二人展を開いた。今年のテーマは「PARTNERS」、つまり金太郎と熊とか弁慶と牛若丸といった風に、二人のパートナーを一人づつ絵に描いたわけだ。ところができ上がった作品を見ると、怪盗ルパンとシャーロックホームズとか、佐々木小次郎と宮本武蔵とか、怪人二十面相と明智小五郎といったように、どちらかというとパートナーよりもライバル同士みたいな感じになっていた。まあそれはそれで面白いだろうとおもった次第である。
展覧会の初日にはとても多くの方々にお越しいただいた。この場を借りてお礼申し上げます。尚、ぼくと和田誠さんの二人展(二回目)は、「テーブルの上の犬や猫」というタイトルで絶賛(?)発売中(文藝春秋刊)です。二人で絵に合わせたショートショートのストーリーも書いています。よろしく。
【○月□日】
駅弁の取材でJR中央線の小淵沢へ行った。ここには「元気甲斐」という駅弁があり、実はこの弁当の包装紙のイラストレーションはぼくが描いている。ずっと以前、TV番組の企画で、流行らない店を流行るようにしようというコンセプトで番組を制作することになり、小淵沢の駅弁に白羽の矢が当たったという次第だった。全体の監督は亡くなられた伊丹十三氏で、弁当のなかみは山本益博氏が担当した。
「元気甲斐」のネーミングは多分伊丹監督の案だろう。二段重ねの弁当になっており、上下共に東西の老舗料理屋の板前が腕を振るっている。今や甲斐路の名物でもあるらしい。まあ一度試食してみてください。因みに、駅を降りて左手にある土産店のレジスターを受け持つ女性はなかなか美人です。
【○月□日】
イラストレーター育成教育の名門、コム・イラストレーターズ・スタジオの第三期が開校しつつあった。生徒は十名。如何に名門かは、この絞り込まれた生徒数にある。今年の東京イラストレーターズ・ソサエティの公募展に、この教室(申し送れましたが、ここは安西水丸が主催している)からグランプリ一名、入選二名が出たことはまさに快挙である。十名ほどの生徒のなかから三名も入選者が出たことはやはりすごい。なかにはコムの入選者は水丸のコネだなどと言う大馬鹿者もいるが、東京イラストレーターズ・ソサエティの会員三十名ほどで選ぶ審査で、そんな手品はできるはずがない。冗談とフンドシはまた(股)にしてくれと言いたい。とにかく入選の皆様おめでとう。また、もし本気で(ここが重要)イラストレーターになりたい方がおりましたら、ぜひコム・イラストレーターズ・スタジオへ一報ください。電話は03-5766-7711です。
【○月□日】
新緑の美しい青山である。もうすぐカポーライの翻訳が終わる。おもいっきり遊びたい今日このごろである。このことはいずれまた。

あんざい・みずまる
イラストレーター。1942年東京生まれ。日本大学芸術学部美術学科造形卒業。電通、NYのデザインスタジオ、平凡社でADを勤めた後、フリーのイラストレーターに。現在は事務所を神宮前3丁目に構える。小説やエッセイなど文章も人気が高く、「アマリリス」「手のひらトークン」「バードの妹」「メロンが食べたい」「魚心なくとも水心」「美味しいか恋しいか」など著書多数。